転売ヤー対策には公式転売ヤーを雇え

[B! 外食] 飲食店の予約の権利をオークション形式で売り出すというすさまじいサービスが開始「さすがにドン引き」「何がダメなの?」

前から言っているが、PS5とかも全部これをやるべきなんだよ。出荷量の一部だけオク形式やプレミア価格の直販にする。公式が金で解決できるルートを用意すれば、転売屋は絶滅する。それをやらないのはメーカーの怠慢。 - sangping のブックマーク / はてなブックマーク

 

転売の話題が出るたびにブコメしてきたことなのですが、改めて100文字では書ききれない部分について補足を。

 

まず最初に言っておかなければいけないのは、私は世の転売行為の大部分を特段悪い(規制すべき)行為だとは考えていないということです。

その理由は単純で、転売行為のほとんどが市場原理で駆逐することのできない外部不経済を用いたハックなどではなく、普通に市場原理で対抗可能な経済活動の一様式にすぎないと考えているからです*1

転売が問題となるのは主に買い占めによる市場価格の異常な高騰や品薄ですが、これは正規流通の側が適切な対応を行えば、直接に転売行為を規制せずとも問題にならない水準までその活動を抑止することが可能であると私は考えます。

その方法が、再三ブコメ等で書いてきた「公式によるプレミアム価格での販売」です。

この方法、理屈は非常に単純です。つまり、公式(主にメーカーを想定)自身が一部の商品を、転売ヤーの販売している価格と同等の高価格*2で直販することで「同じ値段なら素性の分からない転売品よりも公式のお墨付きのある正規品を買おう」という発想に購入者を誘導し、転売活動に旨味が無い状態を作り出そうというアイデアです。

公式側には転売ヤーに流れていた上乗せ分のプレミアム価格が入ってくるので損はありませんし、社会全体としても不必要な規制を設けずとも問題解決を図ることが叶います(リバタリアン的にはここ大事)。

もちろん、大部分の商品は従来どおり一般流通に正規の価格で流すことになるので、これで市価が高騰してしまうことはありません。

あくまでも新製品発売当初などの品薄になりやすい一時期に限って、転売ヤーに流れるはずだった顧客を公式で根こそぎキャッチアップして、転売ヤーインセンティブを無くすのが目的です。

具体的な方法としては、公式自身がオークションを実施したり、プレミアム価格での直販サイトを作ったりというパターンも考えられますが、これらは公式が自社の中にそれらのオペレーションに対応するための新たなシステムを構築しなければならない分、導入コストも必要となるため多少ハードルが高いものと考えられます(特に個別販売を想定していない製造専業のメーカーなどの場合は顕著)。

むしろ、私がオススメしたいのは、それらのオペレーションも含めてすべてのプレミアム品流通の活動を、既存の転売ヤーに一任してしまう方法です。

メーカーは、転売(オークションサイトの利用など)のノウハウを豊富に持っている「プロの転売ヤー()」と契約し、そこにある程度の数量の商品をプレミアム品として出荷します。出荷価格は卸価格ほど安い必要はなく、希望小売価格よりわずかに安い程度でも十分です。

あとはメーカーのホームページなりで公式転売ヤーのリストを公表しておけば、勝手に公式転売ヤーたちがいい感じの(闇転売ヤーよりちょっとだけお安めの)値段を付けて公式プレミアム品を売りさばいてくれ、次第に闇転売ヤーは駆逐されていくでしょう。

(更に発展的なアイデアとして、こうした「公式転売」を生業とする「プロ転売企業」を設立し、転売側から積極的に品薄を起こしそうなメーカー相手に上記モデルを営業していくというパターンも考えられます。誰かチャレンジしてみませんか?)

以上、なかなか良いアイデアだと思うのですが、どうでしょうか。

 

 

一方、現実には今のところ、こうした手法を取り入れているメーカーはほぼ存在しません。

理由はいくつか推察できるのですが、まず1つ考えられるのは、既存流通の顔を立てるため直販に踏み込みづらいというメーカー特有の事情が存在しているという可能性でしょう。しかし、今回のアイデアはあくまでも希望小売価格よりも高い値段のプレミアム品を少量販売するというものであるため、それが一般流通の正規品と競合することは考えづらいはずです。慣習として流通側への配慮で直販を控えるということはあるのかも知れませんが、そこに合理的な意味はあまりないように思えます。

また、第2の理由として、メーカー自身が「品薄戦略」を採るため意図的に転売ヤーを放置しているという可能性です。これは、上記プランによって公式が主体的に転売ヤー対策を行うことが可能であるというアイデアを世間一般の人々が持っておらず、品薄への批判が公式よりも転売ヤーへと集中する傾向が強かったため、公式がそこに乗っかった結果であるともいえるでしょう。つまり、多くの消費者が上記プランの有用性を評価し、メーカーの不作為を不誠実なものだと糾弾するような世論が形成された場合、この理由は解消に向かう可能性があると考えられます。

その他、意図的に品薄戦略を採らないまでも積極的に品薄対策を行うほどのインセンティブが公式側に存在しないといった可能性や、プレミアム価格での販売に「謎の」忌避感を持つ層への配慮といった可能性も考えられますが、いずれにしても世論の大部分が上記プランを支持するようになれば、公式が動かない理由は激減するでしょう。

 

要するに我々消費者が、プレミアム販売をして欲しいと強く要望していないことが公式の動かない一番の理由であり、これが変われば、転売ヤーに悩まされる現状も大きく変わっていくのではないかと私は考えるのです。

*1:一部、公正な手段を極端に逸脱した買い占めなどによる不当な転売行為が存在することは否定しません

*2:もしくはわずかにそれより安い価格